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センター長ごあいさつ

 徳島大学大学院医歯薬学研究部DDS研究センターのセンター長を拝命しております、大学院医歯薬学研究部(薬学域)衛生薬学分野教授の小暮健太朗です。本DDS研究センターは、徳島大学のDDS研究者の研究力を結集することによる我が国発・徳島大学発のDDS(薬物送達システム Drug Delivery System)開発を目指して設立されました。
  今、DDS研究は岐路に立たされています。長年、DDSの基盤として受け入れられてきたEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果が、ヒトでは見られないという論文が発表されて以降、それを拠り所としてきた多くのDDS研究の継続が難しくなっているのです。EPR効果とは、腫瘍が急速に大きくなることに対して新生が追い付かないために形成された粗い構造の血管から、200 nmよりも小さい物質・粒子が腫瘍組織に漏れ出るとともに、リンパ系が未発達であるため物質排出が滞ることで、抗ガン剤を封入したリポソームなどのDDSナノ粒子が腫瘍に集積しやすくなる現象です。このEPR効果に基づいて様々ながん治療用DDSが開発されましたが、EPR効果はマウスなどの実験動物では起こるが、長い時間をかけて成長するヒトの腫瘍では見られないという論文以降、EPR効果に基づくDDS戦略は見直さざるを得なくなっています。
  このような状況を何とか打破するため、徳島大学に在籍するDDS研究者の知恵を結集する場としてDDS研究センターが設置されました。コロナワクチンで脚光を浴びたmRNAや近年上市されたsiRNA製剤など、核酸医薬が新しいモダリティーとして期待されていますが、これらを効かせたい部位に送達し、効かせたいときに効果を発揮させるための工夫、すなわち革新的なDDSが求められています。本DDS研究センターでは、我が国発・徳島大学発のDDS開発を目指した活動を行っていく所存ですので、皆さまのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

令和5年7月
DDS研究センター
センター長 小暮健太郎
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