ホーム > 研究部門

研究について

 本部門は、ナノテクノロジーを基盤としたペプチド・核酸等のモダリティーに最適な送達技術の開発研究に取り組むことを目的としています。構成員である小暮は、微弱電流を用いる経皮薬物送達技術であるイオントフォレシス(Iontophoresis: ItP)による様々な物質(インスリン、リポソーム、siRNA、CpGオリゴDNA、NF-kBデコイオリゴDNA、mRNA)の皮内送達と薬物機能発現に成功するとともに、皮内徐放を目指したナノ粒子の構築に取り組んでいます。本部門においては、ItPおよびナノ粒子を基盤として様々なモダリティーに最適な送達技術の開発に取り組んでいます。
 また構成員である金沢は、多様な機能分子(高分子・脂質・ペプチド・核酸)をナノサイズで共集合化させた様々なナノ粒子製剤を開発するとともに、注射による血流を介した薬物送達性の悪い臓器・組織に対して、注射以外のアクセスしやすい薬物送達ルートを開拓しナノ粒子と組み合わせた新しい薬物送達技術の構築に取り組んでいます。本部門においては、鼻腔から脳への薬物送達ルート(Nose-to-Brain)による脳内への画期的なDDS開発実績に基づいて、ペプチド・核酸(オリゴヌクレオチド・mRNA)等のモダリティーに最適な脳内への送達技術の開発研究に取り組んでいます。
 本部門は、Pharmacokinetics (PK:薬物動態学)/Pharmacodynamics (PD:薬力学)の視点から、ヒト生体内における、低分子化合物からペプチド、タンパク質、核酸などの高分子、細胞外小胞に至る様々な物質の動態や、それらの作用を規定する分子機構を定量的に解明することによって、新たなDDS担体の開発や生体内DDSルートの開拓に取り組むことを目的としています。構成員の立川と稲垣は、それぞれ主に「脳関門操薬」、「胎盤関門操薬」に重点をおきながら、異分野融合のもとに、中枢神経疾患や、妊婦に起因する疾患に対する治療薬開発に不可欠なDDSの学術的基盤の構築を目指します。具体的には、オミクス技術を軸として、ヒト「脳関門」及び「胎盤関門」における物流システム(膜輸送システム)の作動原理を明らかにするとともに、その知見に基づいてヒト三次元脳関門・胎盤関門模倣システムの構築とDDS評価系の確立、及び関門突破型ナノ粒子や細胞製剤の開発へと展開します。
 本部門は、DDSに用いられる薬物送達体、特にポリエチレングリコール(PEG)修飾ナノキャリアやタンパク製剤自体に対する生体反応の評価と制御、また免疫応答と制御を利用した新規な治療法の開発に取り組むことを目的としています。構成員である石田は、PEG修飾リポソーム投与時にPEGに対する抗体が誘導されることを世界で初めて報告するなど、人工高分子のPEGに対する免疫反応の解明と制御に取り組んでいます。特に血中に存在する抗PEG抗体は、PEG修飾製剤の薬効と安全性に大きな影響を与える可能性が高いことから、国内外から注目を集めています。構成員の高田とともに、特に安全性の観点から薬物送達キャリアやタンパク製剤に対する免疫応答に関して研究を進めていきます。また、構成員の安藤は、抗PEG抗体を利用した脾臓への抗原デリバリーによるユニークな抗体誘導法の確立を目指しています。この方法を用いれば、通常の免疫法よりも短期にかつ少ない抗原量で、より多様な抗体が得られることを確認しています。さらに、抗薬物抗体(ADA)の誘導と、ADAの誘導によって薬効を失う抗体医薬を補完する新たな治療法の開発を目指した研究を展開しています。
up矢印